お茶の間 けいざい学 (43)
 空間軸と時間軸──最先端は混然一体
 

 これまで、市場経済の発展について述べてきました。
  そこで今回は、現代市場の最先端の動きを説明してみたいと思います。

 現代の世界市場では地球上を網の目のように結んだ情報ネットワークの中を記号が飛び交うことで、巨大な資金が動き回っています。しかし、これを支える原理は市場が生まれ、発展してきた中で生まれたものなのです。
  電子記号となった巨大な資金が世界を飛び回るようになり、複雑な数式を駆使するディーラーが難しい取引をしているように見えますが、本当はまったく難しくないのです。
  図を見てください。今、日本のお金持ちの「キンマン」さんが図の左側の実線に従って資金の運用を考えたとします。これは100円を1年間、日本の銀行に円のまま預けると、1年後の受取額は100円であることを示しています。
  キンマンさんは考えます。「アメリカの定期預金は金利が10%だという。ドルで運用しよう」。
  そこで100円を1ドルに換えて、図の右側の点線に沿って1年間、アメリカの銀行でドル預金で運用します。
  1年後にキンマンさんが受取るドル預金は10%の利子がついて、1.1ドルです。
  問題は一年後の円ドル相場がどうなっているかです。円が1ドル80円だったら、いくらドルで金利をかせいでもキンマンさんは損をします。
  キンマンさんがこのリスクを避けるには、100円をドルに換える時点で、1年先の為替予約を取ることです。
  ここでキンマンさんが予約を取ろうとすると、1年先の円の相場は約90.9ドルなのです。
  ここから先は次回です。よーく、図を見て考えておいてください。
(2003年7月5日「長野市民新聞」)         
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