第1の欠点は、マルクスが指摘したように、貧富の差が拡大することです。
自由競争に負けた人々を悲惨な状況から救うことは人間性の問題でもありますが、市場にとっても、貧富の差が大きいと、お金持ちはお金が余って使わなくなり、貧乏な人もお金がなくて使わなくなるので、結局、お金が回らなくなることになり、市場が死んでしまうのです。
このため現代の市場経済では累進課税や相続税、各種の社会保険や年金などによって、貧富の差を是正しようとしています。
第2の欠点は、市場の拡大に伴い、負の財も市場に流れ込んでくることです。農産物の流入で外国にしかいなかった害虫や病気が入ってくるようなことです。
コロンブスのアメリカ大陸発見は、新しい市場を求めたものですが、同時に梅毒も欧州に"輸入"してしまったといわれています。ペストやエイズの流行も世界の市場が拡大して人と物の交流が盛んになった負の面です。
米国から大量栽培の大豆や麦が入ってくると、日本の在来の豆や麦が栽培されなくなって、希少な品種が淘汰によって滅びてしまう欠点などもこれに含まれます。
第3の欠点は、市場には常に新しい財や人が流れ込む結果、残留農薬が基準以上の野菜などが、知らないうちに販売されてしまい健康被害などを起こすことです。これには、詐欺に近い不良品や消費者を錯覚させる金融商品のはんらんなども含まれます。
最後の大欠点は、思惑です。数々のバブルを発生させ、人の運命を狂わせ、悲劇と喜劇、世界大恐慌と大戦争を残しました。
これについては、次回にお話しします。
(2003年7月19日「長野市民新聞」)
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