お茶の間 けいざい学 (46)
 バブルの発生──思惑で加熱の相場

  さて市場の最後の欠点は「思惑」です。思惑が思惑を呼び、加熱する相場といってもよいでしょう。将来の相場の予測に基づいて、売買する市場では、実際の需給を離れて相場が動く宿命を持っているともいえます。

 第二次世界大戦は1929(昭和4)年のニューヨーク株式の大暴落から始まりました。物が売れなくて、仕事がない大不況では人々がいら立つだけでなく、生きるために他国の富を奪うことを正当化させます。
  飢えた人間は餓鬼と同じです。平穏な時の常識も良心も持てないのです。しかしこの見方は人の心理を重視した考え方で、経済を専門とする私の考え方ではありません。
  このシリーズの後半で詳しく論じることになると思いますが、私は、物が余って売れない経済が始まると、経済の本能は余っている物を大量に消費するか、破壊する方向に動きだすと考えています。
  戦争は、武器や弾薬のような余剰の生産物がないとできないことです。市場経済学では、経済を回らなくしている過剰な在庫を一気に解消する最大の行為が戦争だと考えられています。
  先物に代表される記号取引の拡大は、実際の需要がなくても、将来予測に基づく取引を拡大させます。将来、それ程の需要が発生することは有り得ないと思っていても、思惑で当面の値上がりが見込める場合は、人は自分も思惑の上を行こうとして買っていきます。
  思惑が思惑を呼ぶのです。
  10年前の日本の土地バブルを見れば、よく分かります。記号ばかりを取引するようになった現代の市場では周期的に過熱とバブルが発生しますが、これを克服する方法を、現代の市場経済学は持っていないのです。
(2003年7月26日「長野市民新聞」)         
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