お茶の間 けいざい学 (50)
 市場原理の普遍性──ネットの中で応用

 名もなき人々が発見した市場の原理は、現代でも経済生活のあらゆる場面に適用されており、多くの欠点はあっても普遍性・汎用性の極めて高い原理といえます。

 インターネット時代を迎え、ネットの中では無数のインターネット・オークションが行われていますが、これも市場の原理をそのまま適用して発達したシステムです。
 最近注目のグリッドコンピューターシステムは、社会に存在する無数のコンピューターをネットで結び付けて、一つの巨大なスーパーコンピューターをつくり、これを社会の共通の財産として皆で利用しようとするものです。 
 各家庭や会社のコンピューターの中にある、遊んでいる部分を互いに融通し合って使うことで、衛星や惑星の軌道計算などにも使える巨大なスーパーコンピューターを誕生させてしまおうとする発想は、市場が発見した原理そのものといえます。
 市場に陸の民が野菜を運び、海の民が魚を運び、山の民が肉を運び込んで互いに余っている部分を融通し合うことから始まった市場の機能。これは、空の上から見れば、市場の指令に基づいて陸の民、海の民、山の民が地域の全住民を養うのに必要な野菜と魚と肉の適量を、それぞれに仲良く分担して生産しているように見えることでしょう。
 市場社会は、あたかも市場をコントロールタワーにした一つの会社ともいえるかもしれません。
 この原理をそのままインターネットの中で応用すれば、ネットで結ばれたすべてのコンピューターの余っている計算機能や記憶機能を一つのコンピューターの部品と同じように使うことで、一つの巨大なコンピューターを誕生させることになるのです。
(2003年8月23日「長野市民新聞」)         
      back  お茶の間けいざい学 目次  next