お茶の間 けいざい学 (55)
 火の発見──生産や破壊の拡大

 人類がいつ火を使うことを始めたのかは、興味のあるテーマです。石器時代の遺跡には火をたいた跡がありますから、かなり古い時期に火を発見していたようです。

 もし、早い段階で火を発見していなかったら、人類のように牙もつめもない生き物がサバンナで生き残ることは難しかったでしょう。
 落雷による山火事か、火山の噴火による溶岩流などによって、人類は火に関して3つのことを最初に発見したはずです。 
 1つ目は、人類を襲って食べてしまおうとするトラやオオカミが火を恐れて逃げ惑う姿を見て、火を身近に置けば身を守ることができる。
 2つ目は、山火事で焼け死んだ動物の死体を食べてみたら、おいしかった。肉の中にいる寄生虫なども死滅していて、体にもいいらしい。 
 3つ目は、火の周辺は暖かく、明るい。冬の寒さを防ぎ、夜の闇を照らしてくれる。
 こうして、地球上に存在する生物の中で、唯一人類だけが、火を恐れず、火を利用する生き物となりました。
 火の発見です。
 人類が火を使う生物ととなったことは、その後の人類の歴史に大きな影響を与えました。
 少し難しくなりますが、火が燃えることは分子の結び付き方が変わる化学変化の世界です。
 近代の人類が蒸気の力で走る鉄の船を開発したり、ガソリンで走る自動車を発明して、移動範囲を拡大したことも、鉄を精製して刀を造り、火薬を発明して鉄砲を造り、最後は原爆まで開発したことも、すべて火の発見がスタートだったといえます。 
 火による生産力の拡大と、破壊力の拡大を同時に行うことで、人類は進化を始めました。
         (2003年9月27日「長野市民新聞」より」) 
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