お茶の間 けいざい学 (59)
 金属の発見──加熱し文明の基に

 人が最初に金属を発見したのは、火を使うようになったためです。土を焼いたり、砂鉄の多い砂浜で焚き火をしたりしているうちに、溶けて固まった金属の塊に気付きました。

 それに熱を加えると軟らかくなって、簡単に加工でき、冷えれば石器よりも丈夫でよく切れる刃物となります。器にすれば土器より丈夫で火の回りが早い鍋や釜が作れることなどを学んだのでしょう。
  ここから人類は、金属を使うことを始めました。
  ニューヨークで現代を象徴するように立ち並ぶ摩天楼の数々は、鉄の骨格とコンクリートの壁で構成されています。
 コンクリートは人類が最初に土器を作る時に発見した「土は焼けば変化する」という原理の延長から生まれた物で、セメントは石灰岩・粘土・鉱滓(こうさい)を焼いて作ります。
 鉄骨も人類が最初に発見した「金属は加熱すれば溶けて加工しやすく、冷えれば堅くて丈夫になる」という原則の延長から生まれ、建造物の骨格として使われるようになったものです。
 最先端の現代文明も、火の発見がもたらした土器と金属の発明の応用でしかありません。
 人類が@火を発見し、A道具を作ることを覚え、B火を使うと物の質が変わることを知ったことは、その後の人類の歴史と、産業の形を決めました。
 人類が壮大な建造物を建て、産業革命に代表される巨大な生産能力を持つ工場を運営するまでに進化したのも、鉄の塊ような戦車や、鉄の島ともいえる戦艦や航空母艦で世界大戦を行ったのも、石器時代、縄文時代でのこれら人類最初の3つの発見がスタートだったのです。
 さあここから改めて人類の発展の歴史を見てみましょう。
         (2003年10月25日「長野市民新聞」より」) 
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