お茶の間 けいざい学 (67)
 工業の躍進──動力源の置き換え

 工業の進化は、社会の生産性を飛躍的に拡大していきました。
 石器が青銅器に、青銅器が鉄器に進化するだけでも、動物を捕る効率、皮をはぐ効率が飛躍的に拡大したことでしょう。畑作や稲作が始まってからは、鉄のくわやすきが土を深く掘り返すことを可能にして、収穫量を増大させたものと思われます。

Hoki

 土器の発明も工業の進化といえます。土器が生まれて、初めて人類は米を炊いて食べることが可能になったからです。
 工業の進化とは「人が動く場合の作業の効率を数倍、数百倍単位で拡大する方法や道具を発見する過程」といえます。
 すきやくわ、弓ややりはすべて人の手足の動きを拡大させて、効果を大きくする道具でした。
 荷車も人が自分の背に乗せて運ぶ荷物の量を飛躍的に拡大させる発明でした。やがて、これを牛や馬に引かせようとする発想が生まれてくるのは当然ですが、動力源に人間以外のものを使うことは実は画期的なもう一つの発想だったのです。
 すきやくわ、弓ややりはすべてこれを使い動かす動力源は、人の身体です。
 牛や馬を動力源に使う発想は、人が粉を作るときにひいていた石臼の動力源に水車を使うことを発見したり、弓を張る人力に代わるエネルギー源として火薬を発明したり、牛や馬の代わりになる蒸気機関車を発明したりした人類の歴史への大きな出発点でした。
 人の手足の動きを拡大する方法として発展してきた道具の歴史は、これを動かす動力源の部分を動物や水力、風力などに置き換えることにより大きな飛躍期を迎えたのです。
 後にお話する産業革命の意味は動力源の開発にあったといえます。
         (2003年12月20日「長野市民新聞」より」) 
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