海底で永久に塩を作り続けるノルウェー民話の石臼と同じで、工場から送り出される商品が消費者に受入れられず倉庫にたまり、倉庫にも収容できない商品が野ざらしになり、さびたり腐ったりするようになると、借金で大型工場をつくった企業経営者の目が据わります。
冷静さを失った経営者は何が何でも商品を押しつけ販売するか、ライバルの工場を爆破するか、火災保険をかけて自分の倉庫に火を放つことしか考え付かなくなります。これが国家規模で起こったのが帝国主義戦争であり、植民地の誕生であったと考えれば、近代の歴史に納得がいきます。近代の戦争には、余剰な生産物を一気に消滅させたいという本能を感じます。
余剰生産物は物の値段を低下させ、不況と大恐慌のきっかけになります。
近代の世界戦争がすべてデフレ、不況、大恐慌を契機に起こっているのは偶然ではありません。
食料や衣類の不足から、飢えや寒さで凍死する人を減らそうとして始まった経済活動は、工業分野での急速な技術開発により、過剰に悩む経済へと変質してしまったのです。
19世紀以降の経済は表向きは従来のままに「貧しさからの脱却方法を考える」としながら、実際には「過剰な豊かさをどうやって消滅させるか」に悩み続けています。
今の日本も過剰に悩む経済でありながら、政治も行政も世論も「貧しさ」を必死に論じています。不思議ですね。
(2004年3月13日「長野市民新聞」より」)
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