産業革命は、動力源の革命と材料の革命を伴っていました。動力源革命の典型は、蒸気機関の発明で、材料革命の典型は、1850年代にイギリスのヘンリ・ベッセマーによって開発された鋼鉄を安く大量に製造する方式でした。
両方とも大量の石炭を必要とします。石炭の需要は急拡大し、炭鉱では10代の子供が16時間もの重労働をするようになりました。
洪水のように誕生する工場は、鉄と燃料の必要性から炭鉱の近くに集中し、炭鉱や工場で働く人々が企業が建てた団地に住み着くことで、人の集中する大都市が誕生していったのです。
産業革命以前の社会では、大部分の人は生活を支える衣食住を満たす目的で働いていましたから、8、9割の人々が土地を耕し、家畜を飼うために田舎に住んでいました。
産業革命によって、社会の半数以上の人々が、都市に住むようになると人の考え方や行動の仕方が変化を始めます。
社会を考える場合に都市の生活を前提に考えるようになるからです。
劣悪な労働環境や生活環境、大きな貧富の差、失業者や浮浪者の群れなどを身近で観察することで、人々は初めて経済の仕組みやルールには問題があるのでないかと考えるようになりました。
経済が学問になった瞬間です。自然発生的であった経済活動を学問として観察し分析してみようとする考え方は、ここから生まれてきたのです。
(2004年4月10日「長野市民新聞」より」)
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