この100年後の1989年、日本では昭和天皇が崩御し、美空ひばりが死去、株価が最高値を付け、消費税が導入されました。ドイツではベルリンの壁が崩壊し、中国では天安門事件が起きた年です。
産業革命が引き起こした貧富の差や帝国主義戦争、共産国家の成立、日本の経済成長とバブルの発生など20世紀を象徴する、すべての事柄が音を立てて崩壊を始めた年だったといえます。
エッフル塔は1900年にパリで開催された万国博覧会に合わせ建設され、鉄を壮大に製造できるようになった産業革命を賛美し、同時にフランスの国力も誇示することで、20世紀の幕開け宣言した建造物だったといえます。
マロニエ並木から見上げるエッフル塔が鉄の量を誇示しているように見える理由は、こんなところにもあるかもしれません。産業革命が謳(おう)歌した文明が、100年少ししか続かなかったことにも深い感銘を感じざるを得ません。
エッフル塔のような巨大な鉄の建造物を可能にした産業革命は、同時に過剰な生産力、過剰な戦力、過剰な公共投資に苦しむ時代を用意したといえます。
21世紀の世界は、コンクリートと鉄がつくり出した文明、ダイナマイトと原子力が生んだ破壊力、壮大なエネルギー浪費と生産装置の拡大がつくりだした環境汚染─などに対する深刻な反省の時を迎えているといえます。
これに伴って、生産の規模拡大やそのスピードを正義と考えていた経済学も大きな曲り角を迎えました。
これに伴って、生産の規模拡大やそのスピードを正義と考えていた経済学も大きな曲り角を迎えました。
(2004年4月24日「長野市民新聞」より」)
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