お茶の間 けいざい学 (85)
 税の誕生──軍備維持で制度化

 石器時代に人が経済活動を始めたころには、当然に税金はありませんでした。

 今でもパプアニューギニアやアマゾンの奥地の人々は税金とは無縁な生活をしています。
 税金が生まれたのは、生産しないで物を食べたり、家を建てたりする人々が誕生してからです。
 税金は社会の中に武力による支配や強制力が誕生した結果、それらの階層を維持するために生まれた制度なのです。
 今のように官僚のすることが失態続きですと税金を払うことがむなしく思えますが、近代国家はどこでも税金を国民の義務としています。「払いたくない」と言っても国は認めてくれません。
 道路建設や河川改修、義務教育や国を守る費用などを税金の必要性として挙げるのは後世の理論で税金が誕生した本当のきっかけは社会に余剰が発生したからです。
 余剰が生まれると、余剰をめぐる争いが起き、軍備が必要になります。
 軍備の整備には武器や鎧(よろい)の調達、城や砦(とりで)の整備、恒常的に武士団を養っておく制度などが必要になります。
 余剰が、余剰を消費する集団や階級を社会に誕生させ、それを維持するための制度として税金が定着したのです。
 サバンナに草が茂り、草食動物が増加すると、草ではなく肉を食べる動物が誕生し、草食動物の増加を押さえ、サバンナの秩序が維持されるようなものです。
戦争は社会に余剰が発生したから始まったと前にも書きました。戦国時代が終わってからの江戸時代の武士は大部分が社会に寄生する階級でした。
しかし彼らが社会の余剰生産物を盛大に消費していたからこそ、江戸時代の平和は長く保たれたともいえるのです。

             (2004年5月1日「長野市民新聞」より」) 
 
      back  お茶の間けいざい学 目次  next