「百姓とゴマの油は絞れば絞るほど出る」とした江戸時代にも、百姓が翌年の種もみを食べてしまわない限度で、夜逃げもしない程度に、絞り取れる米の最大量はどれぐらいかを必死に考えている武士たちがいました。
最初の経済学の書といわれるアダム・スミスの「国富論」の背景にも経済規模を縮小させないでどこまで税金が取れるのかを検討してみようとの発想がありました。同時にアダム・スミスは国富論の中で税制の4原則を(1)公平の原則、(2)明確の原則、(3)便宜の原則、(4)最小徴税費の原則──として挙げています。
今でも税金は公平でなければならないと考えられいます。この意味は大きな経済力を持つ人が多く払うべきという垂直的な公平と、すべての人は等しく負担すべきであるという水平的な公平の、両方の意味があります。
同時に税は民間の経済活動を阻害しない範囲にとどめるべきである──との考え方も各国にあります。
また、税制は誰にでもすぐ分かる簡素な制度で徴税にも経費のかからないものであるべきだとの考えも万国共通です。
なぜ税金が必要かという面では、現代の税理論は税金の役割として(1)公共サービスの代金、(2)所得の再分配、(3)景気の調整弁の3つを挙げています。
高度に組織化した現代の社会では、この理論はいずれも正しい主張といえ、特に(2)の所得の再配分効果はマルクス経済学への有力な対抗となりました。
それでもなお、税制が生まれた切っかけはやはり「社会の余剰をどうするか」というところからだったでしょう 。
(2004年5月15日「長野市民新聞」より」)
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