人類が一時も無しで過ごせない物に空気があります。空気を汚染し、人類が空気ボンベを背負っていなくてならない状態を作りだせば、空気が売れるようになります。そうしたら史上最大の産業が誕生し、大富豪への道が開かれるでしょう。
この話しは荒唐無稽でしょうか。20数年前に飲み水に価格があると考えた日本人はいません。
今は当然のように皆が水を買って飲んでいます。空気を買う時代が来ないと断言できますか。
土壌を汚し、山を荒らした結果、水が売れる世界がきました。水が売れることで水の販売額がGDPに上乗せされ、経済の拡大に貢献したのです。日本はそれだけ豊かになったことになります。
実は経済の大きさを計るGDPは「買い戻した不幸の大きさを計る数値」なのです。交通事故が増えれば修理費や車の買い替えでGDPが増加します。病人が増えれば医療費が増加してGDPが増えます。火災で家が焼ければ建設需要で景気が良くなります。不景気になると江戸の町では火災が起き、建設需要が生まれました。つけ火だったのではないかと考える学者さえいます。
日本の戦後の高度成長も大戦で全てが焼けたからです。買い戻す不幸の規模が大きかったのです。
豊かな社会でさらに景気を拡大させようとすると結局、大きな不幸を作り出すしか方法がないのです。それが戦争を引き起こしたとも言えます。
豊かな社会でGDPが縮小を始めるのは至極当然なことで、これを無理に成長させようとするのは実は危険な事なのです。
(2004年7月24日「長野市民新聞」より」)
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