お茶の間 けいざい学 (96)
 ケインズ経済学──恐慌の回復に効果

 今回は、20世紀に世界のほぼ半数の国々が採用したマルクス経済学について考えてみましょう。

Hoki

 マルクス経済学は、産業革命によって誕生した大量生産社会では、生産手段を占有する資本家階級に富が蓄積されて行く一方で、生産手段を持たずに資本家に雇われる労働者階級には資本や富みの蓄積が行われないので、資本家と労働者の貧富の差が限りなく拡大していくとの考察から生まれた経済学です。
 産業革命後に、欧州の各都市に誕生した労働者の悲惨な生活を目の当たりにしたマルクスは、大英図書館にこもって「資本論」を書き上げました。
 その考えに共鳴する人々が社会の構造を変える運動を起こし、共産主義革命を経て、20世紀には世界のほぼ半数の国が採用する経済体制となったのです。
 マルクスは価値を生み出す源泉は資本家の持つ生産手段ではなく、現場で働く労働者の労働力にあるとして、価値を生み出す労働者階級にこそ富みの分配を決める資格があり、そのためには労働者階級が政治権力を握らなくてなならないと主張しました。
その主張は産業革命が進展する中で貧しさに苦しんでいた多くの労働者の共感を呼ぶとともに、労働者が権力を握る事に正当性を与えるものでした。
 しかし経済理論としては初めから破たんしていました。最大の欠点は第29回で述べたように市場原理を否定したことによる社会の硬直化ででした。
 第2の欠点は、技術革新や新機械の投入で生産性が上がる資本投資の効果を、価値はすべて労働から生まれるとした労働価値説では認めることができなかったのです。
 こうしてマルクス経済学は20世紀の遺物となってしまいました。

 
             (2004年7月31日「長野市民新聞」より」) 
 
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