お茶の間 けいざい学 (99)
 サプライサイド経済学──規制緩和と減税で

 非常に乱暴な言い方になりますが、自然発生した市場の欠点を克服するために、国家権力が市場の経済を100%規制することを良しとした経済学がマルクス経済学とすれば、自由な市場経済の中に大きな政府を置くことで、市場経済の持つ景気変動や失業の発生を抑えようとしたのがケインズ経済学といえます。
 ケインズ経済学よりももっと強く経済の自由を規制しようとする経済学も、幾つか誕生しました。
 主要産業を国有化することで、半分だけ計画経済の国をつくろうと考えた社会主義思想や、豊かな人々から重い税金や社会保険料を取り、貧しい人々に分け与えることで貧富の差があまりない社会をつくろうとした厚生経済学などがそれです。
 貨幣数量説には大きな政府をつくることで、市場経済の持つ欠点を克服しようとしたケインズ経済学の考えを、いま一度規制や政府の干渉の少ないものに戻して、経済の安定を政府でなく金融当局に任せようとする発想が感じられます。
 この小さな政府への流れは第二次世界大戦後の自由主義陣営の中では一貫して続いており、この行きついた先にサプライサイド経済学があります。
 政府部門と貿易収支の双子の赤字の中で誕生したアメリカのレーガン政権は、徹底的な規制緩和と減税でこれを克服しようとしました。それがサプライサイド経済学です。
 政府が赤字なら増税をし、貿易部門が赤字なら輸入規制と国内産業を保護すべきという従来の考えを全く否定し、規制の少ない小さな政府を目指すことでこれを克服しようとしました。
 この経済学は実に乱暴な理論に見えましたが、レーガン政権では見事成功しました。

 
             (2004年8月21日「長野市民新聞」より」) 
 
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