お茶の間 けいざい学  余話編(4)
 終身雇用・年功序列──崩壊は想像以上?

 「終身雇用」「年功序列」は戦後日本を説明するキーワードです。実際に戦後、多くの企業でこの制度は採用され、能率を上げてきました。
 若い頃は賃金が安くても将来は上司のようにぶ厚いイスに座り、高い給料がもらえると信じた(錯覚した?)多くの人々は会社の将来と自分の将来を同一視し、身を粉にして働きました。
 まさに終身雇用と年功序列が会社への無限の忠誠心と無償の勤労意欲をかき立てる魔法のつえだったといえます。
 この制度をここまで定着させ、強固にしたのは徳川時代に採用された幕藩体制ではないかと考えられます。明治維新が武士による体制変革だったので、徳川時代に日本に定着した身分制度や藩への忠誠心がそのまま残ったものと思われます。
 実際、高度成長時代の会社を一つの藩とみればサラーリマンの意識は武士そのもので、上司に仕え会社に骨を埋めるのを当然と考えていました。
 高度成長は量的拡大を繰り返した経済で、拡大コピーを何度もとり続けたような社会でした。電気製品は増えても社会の価値観や構造が大きく変化した訳ではないのです。
 だからこそ終身雇用と年功序列は機能し、社会のあらゆる分野に二世が登場する日本社会の土壌が生まれたといえます。
 量の時代が終わり、経済の質や構造が変化を始めると、終身雇用と年功序列が崩壊する早さは想像以上のものとなるのではないでしょうか。
 戦国を終わらせるために採用した徳川幕藩の体制は、わずか300年弱の制度です。それ以前の日本は海外の文化や技術をどん欲に取り入れ、身分に関係なく、個人が創意と工夫でのし上がってきた社会です。
 こちらの方が日本人の本音ではないかと考えられそうです。

               (2004年10月2日「長野市民新聞」より」) 
 
      back  お茶の間けいざい学 目次  next