お茶の間 けいざい学  余話編(5)
 ぜいたくは貧者を救う──節約は不況を加速

 経済現象には合成の誤謬(ごびゅう)ということが、沢山あります。
 不況になると、個人は自分を守るために節約をしますが、この一人ひとりの動きが合成されると物がますます売れなくなり、不況を加速させる方向に動くのです。
 逆に芋が市場で値上がりしたので、もうけてやろうという自己的な動機で、自宅の芋を市場に持ち込むガメ太君の行動が、飢えているハラペコ集落の子供たちを救う天使の行動と同じになるような現象もあります。
マグロの大トロは、すしにすると高い例だと1個が数千円もします。マグロは赤身しか食べられないヤキモチさんが、ある日「ぜいたくは敵だ」というプラカードを持ってすし屋の前でデモを始めると、誰も遠慮してトロを食べなくなるかもしれません。
 この結果、何がおこるでしょう。トロが売れなくなった市場では赤身が急速に値上がりして、ヤキモチさんも困るようになります。マグロ1本の値段は、大トロ、中トロ、赤身のそれぞれの部分の組み合わされで決まるからです。トロの部分がタダになると、その分は赤身に上乗せして売らざるを得dなくなるのです。
 牛肉にも関係は同じです。目の玉が飛び出るような値段の霜降りを買ってくれる人々がいるから、私もわが子に安いカルビの焼き肉を時々食べさせてあげられるのです。 隣の席で霜降り肉を塩で盛大に食べている家族がいると、感謝で手を合わせたくなります。
 市場経済ではお金のある人が節約をすることは貧者を苦しめ、あまり褒められたことではないのです。ましてお金持ちが庶民の市場に参入して、安い肉や魚を買うのはもっと悪いことになるのはいうまでもありません。

               (2004年10月16日「長野市民新聞」より」) 
 
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