お茶の間 けいざい学  余話編(6)
 声の大きい者の勝ち──情報戦で富を手に

 金に依存していた通貨が不換紙幣を経て、コンピューターネットの中を飛び交う記号となってきた歴史の過程で経済も急速に情報化社会の中に組み込まれてきました。
 通貨がコンピューター内の記号となった時点で、経済の実体も情報そのものになったと言っても良いかもしれません。
 皆さんが自分は百万円の蓄えがあると思っている「蓄え」は何ですか? ATMに預金通帳を挿入したら打ち出される100万の数字でしかないでしょう。銀行のコンピューターが壊れて記録が消えたら、どうなるのでしょう。今、あなたが信じている価値は記号が打ち出されるであろうとの期待でしかないのです。
 実はバブル崩壊後の日本経済が回復しない理由は、日本の歴史と伝統から生まれた株式持合やグループ経営、担保主義での間接金融などの独特のルールがすべて外部から否定されてしまったことと、資産や退職金などの積立不足が執拗に報道されたことが大きいのです。どちらも情報の産物です。
 ブランド品の価値は神話を作り、これを維持する情報戦から生まれているものです。どんな優れた会社でも「危ない、危ない」と繰り返し報道されれば、商売ができなくなり、必ず倒産します。
 逆にボロボロの会社でも「いい会社、いい会社」と報道されれば、お金を貸す先も、増資に応ずる先も増加し、本当に優良な会社になるでしょう。
 国家の信用も同じです。アメリカ国債と日本国債の信用の差は完全に情報戦略の差と考えられます。
 これからの社会では架空に近い情報でもこれを操作し、情報戦に勝った者だけが富を手にすることになるでしょう。情報化した経済では「声の大きい者が勝つ」のです。

               (2004年10月23日「長野市民新聞」より」) 
 
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