お茶の間 けいざい学  余話編(10)
 インフレ──通貨価値が下がる

 実は通貨が価値の裏付けを持たず、国家が予算承認を議会に求める政治体制となった時点で、経済はインフレを前提にしなくては成立しないシステムになりました。
 ところが一流大学をでた日銀マンたちは、いまだにインフレ退治が中央銀行の役割と本気で思っています。
 デフレはすべての物の価格が下がる現象です。逆にいえば、紙片でしかない通貨の価値だけが上昇していく経済です。その場合はすべての人が唯一価値が上昇する通貨をできるだけ使わないで保管することが、最も経済的に合理的な行動ということになります。
 従って、経済活動が萎縮し続けます。心臓の働きが弱り、どんどん血液の循環が悪くなっていくようなものです。
 インフレは通貨の価値が下がり続けることですから、人々は争って通貨を使おうとします。この場合の通貨はホットタオルで、持っていると熱いので、いっときも早く人に投げたくなるのです。
 さらに年金や社会保険が整備された社会では、老人が増え財源が不足しても、年金支給額のカットを議会に承認させることは不可能でしょう。議員が選挙に落ちてしまうからです。
 同じことは既得権となった補助金や公共支出にもいえます。この場合でも、インフレが進行していれば「予算額を引き上げない」という選択を何年か維持し続ければ、年金や補助金の実質的なカットを達成することが可能になります。
 現代の経済はインフレを前提に成立している経済で、インフレを否定することは経済そのものを否定することになるのです。日本がデフレがいかに駄目なシステムであるかという単純な事実を学ぶのに、バブル経済が崩壊してから13年の月日が必要でした。

               (2004年11月20日「長野市民新聞」より」) 
 
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