お茶の間 けいざい学  余話編(12)
 金は天下の回り物──貨幣が財を動かす

 お金の流れは家庭の水道に例えられます。水量は、水道菅の太さと流れる水の早さで決まります。お風呂の水がたまる時間は、水道の蛇口の太さと出てくる水の勢いで決まるのです。
 同じ原理で経済の規模は中央銀行が発行した貨幣の量と、その量の貨幣がどのくらいの早さで回転するかで決まります。これを「貨幣の流通速度」といいます。
 デフレ経済になると中央銀行がどんなに貨幣を増刷しても、貨幣はたんすの中にしまい込まれて流通しなくなります。
 皆さんがたんすの中にしまってしまう貨幣は死んだ貨幣で、周りの人に職や所得を与えるチャンスを殺している貨幣ということになります。
 『金は天下の回り物』なのです。お金を使う人がいて、これを受け取ることで、初めて所得を手にできる人が生まれ、経済が拡大していくのです。
 節約が美徳というのは自己保身としては正しいのですが、不景気な時期の経済からみれば、迷惑な行為でしかありません。 貨幣の流通速度が上がってくると、これが周りの財も動かすようになります。太助さんの散財で潤った居酒屋の好助さんが、待合で一両を散財するだけでなく明日の酒を仕入れておくために、自分の財布を持って近くの酒屋に出掛けるからです。
 初めの一両が回転していく周辺で、近くの酒屋さんも景気が良くなることになります。お金を回転させていくと、周辺の経済も動きだす現象を「乗数効果」と呼びます。
不景気になると行われる財政支出の拡大は、この理論に基づいて、政府が、最初のお金が回りだすボタンを押す彦左衛門さんの役割を果たそうとしたものです。
 でも、最近は効かなくなりましたね・・・。

               (2004年12月4日「長野市民新聞」より」) 
 
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