お茶の間 けいざい学  余話編(19)
 市場が選べない価値──分割ができない財

 市場には平等な立場の参加者が競りを通じて適正な財の分配と、その分配を可能にする公正な価格を決めていく機能があります。
市場がこの機能を発揮するには、市場にさらされる財やサービスが市場に参加する個人や個々の企業によって独占できる形でなくてはなりません。
地域の景観や安全などのように、共同社会が必要としていても、個々の企業や個人が直接手にできる形に分割できないものは、市場で競りに掛けることができないのです。
 空気や川の汚染、ごみ問題など社会全体にとってマイナスな財や、逆に景観や環境保全、伝統や風土のように地域全体にとっては価値ある財産も、市場は選別することができないのです。
 市場が選択する価値はあくまで個人や個々の企業や集団に届く形にまで、分割できる財に限られるのです。
 ところが、21世紀の世界が求めだしている価値は、環境や平和、文化や伝統、民族の誇りや歴史など、どれも個々のレベルにまで分割できないものばかりです。
計画経済に勝利して新世紀に突入した市場経済は、実はすでに役に立たないシステムとなっているかもしれません。
人々が共通で持たざるを得ない環境や安全、美しい自然や町並みなどの価値を市場は選び出せないからです。
この点を解決しない限り市場経済も近い将来、淘汰(とうた)され、人類の遺物となっていくのではないでしょうか。
 答えはまだ発見されてはいませんが、「街を美しくしよう」「環境を守ろう」「山をを守ろう」などのNPO活動を市場が選択する方法が発見できれば一つの解決法になる可能性があります。
 皆さんも考えてみてはいかがでしょうか。

               (2005年1月29日「長野市民新聞」より」) 
 
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