黒姫山 (信濃富士) (Mt,Kurohime)         

                              登山記録2004年10月7日を読む
                               (黒姫山登山の参考になります)

黒姫山は、長野県信濃町にあり、北信五岳の中心に位置する山です。
標高2,053.4mの複式成層火山で、頂上北西に噴火口が広がり、中央にはすり鉢を逆さにしたような中央火口丘、小黒姫(2046m)があり、外輪山と火口丘の間には三日月型の火口原が広がっています。
黒姫山は今から約17万年前ごろから火山活動を初め、4万年前ごろに現在の中央火口丘(小黒姫)を形成しています。
黒姫山は信濃富士とも呼ばれ、特に信濃町の富士里方面から見た山容が一番きれいです。
富士里とは黒姫山を富士に見立てて “富士の裾野にある里” という所から富士里と言うようになったのでしょう。裾野には、広大な黒姫高原が広がり、スキー場、黒姫童話館、コスモス園、ホテルなどの観光施設があり ます。

黒姫山
信濃町、富士里方面から見た黒姫山
信濃富士


黒姫山では、標高1300m付近まで杉やカラマツの植林がされていますが、それより上部にはブナの天然林があります。中には直径1mを超えるブナも多く見られます。

しらびそ平
標高1800m付近からオオシラビソ、コメツガなどの針葉樹が多く、火口原の北西部には、しらびそ平と呼ばれる針葉樹の原生林があります。ここのオオシラビソやコメツガはすばらしく、直径70〜80cm、中には1mに達し、高さも30mを越える巨木があります。地上から天に突き刺すようにまっすぐに伸びた姿は美しく壮観です。大きな木は樹齢300年以上にもなると思います。巨木でありながら樹皮は若々しく、これからもすばらしい森を見せてくれることでしょう。


しらびそ平のオオシラビソとコメツガの原生林。 
標高約1850m
針葉樹の森(オオシラビソ、コメツガ)

火口原
火口原には峰の大池と七ツ池 (黒姫伝説にもとづく、女性の化粧用七つ道具、鏡、櫛などの名前がついた池) があります。丈の低い笹が一面に広がる火口原の風景はすばらしく、現世からかけ離れた世界のようにさえ思えてしまいます。周りを外輪山と小黒姫に囲まれた、閉鎖された空間のため、他の山を見る事はありません。このような景観に出会うことは他の山ではないと思います。実際に登られて、心と体で感じていただくのが一番です。
七ツ池近くのササの中に埋もれ、空を観れば、白い雲が青い空を漂い、うららかな陽を浴び、そよ風がササの葉を揺らし頬を撫でていく、時間までもが歩みを止めてしまう、そんな感覚を呼び起こす空間です。峰の大池は、幽玄の美しさが漂う神秘的な世界です。
七つ池と峰の大池にはクロサンショウウオが生息しています。5月下旬から6月にかけて産卵が行なわれます。
峰の大池の倒木に産み付けられたクロサンショウウオの卵塊。

外輪山の内部の樹林の中には、オサバグサが大群落を形成しています。火口原の一部と頂上付近にハイマツが見られます。(中部地域の、この標高でハイマツがあるのは珍しい)
黒姫山周辺には湿原が多く、環境省選定の重要湿地に、黒姫山湖沼・湿原群として登録されています。

【小黒姫と御巣鷹山】
現在の地図などでは、小黒姫を御巣鷹山と表記していますが、古い地図では御巣鷹山は別にあります。御巣鷹と呼んでいる地域は、黒姫山の北西部で、関川と氷沢川に面した裾野で、この地域の小さな起伏の一つを、御巣鷹山と呼んでいたようです。これは森林管理署(旧営林署)に勤務していた年配の方や、お年よりにもお聞きしました。
また、戸隠の古老にも小黒姫についてお聞きしました。。今は地図などで御巣鷹山と表記してあるが、小黒姫と御巣鷹山は同一なのか。古老曰く、「小黒姫は小黒姫、御巣鷹山は御巣鷹山で別の山。御巣鷹山は大ダルミから笹ヶ峰に向かう途中の小さな起伏を御巣鷹山と呼んだ」、とこちらも明快。こちらは信濃町の年配の方に聞いた話と同じです。
いつ頃から小黒姫を御巣鷹山と誤記するようになったかは、わかりません。

黒姫山の火口原、この中央に七ツ池があります。

ミネザクラ
平成14年6月9日火口原付近で撮影

外輪山から望む峰の大池 峰の大池
頂上付近から望む、峯の大池 峰の大池

黒姫山の地図を見る

黒姫山には登山道が4本あり、表登山道、小泉登山道は健脚向きで登りで4時間近くかかります。黒姫新道は一番登りやすく、開けた尾根歩きも楽しめ景色もよくお勧めの登山道です。頂上からの展望は素晴らしく、富士山、アルプス、飯縄、戸隠、高妻、雨飾、火打、妙高を初め、眼下には野尻湖、善光寺平が一望できます。頂上には黒姫弁才天の祠があります。黒姫に登山をされたら、ぜひ七ツ池のある火口原までいくことをお勧めします。山上の別天地とよく言いますが、まさにここもその中の一つです。笹原に寝転がって、流れ行く雲を見れば、時間の経つのも忘れてしまいます。

黒姫山大滝

黒姫山の中腹にある、幻の滝 「大滝」

妙高・戸隠山群の中には、苗名滝、惣滝、ヒコサノ滝をはじめ大きな滝がいくつもあります。
これらの滝は年間を通して見ることができます。(冬、見に行くのは命がけです)
黒姫山の大滝は普段見ることはできませんが、春4月上旬から下旬にかけて、南風が吹き込み気温が上昇し、多量の雨が降ると急激に雪解けが進み、そのわずかな時に見ることができます。ですが夜間冷え込むと、翌朝滝は落下していません。まさに「幻の滝」です。この滝はただ「大滝」と呼ばれています。

大滝は、信濃町の柏原をはじめ、町の広い範囲から黒姫山の中腹に見ることができます。

ヒカリゴケ

真中の苔の奥に見える緑色がヒカリゴケ。
岩の間の暗いところのため、手ぶれをおこしています。

黒姫山では表登山道(東)、小泉山道などでヒカリゴケを見る事が出来ます。
注意していないと見落としてしまいますが、緑色の輝きは神秘的です。