コラム

遺言のススメ

 近頃、遺産分割事件の相談や事件依頼が増えています。本来は仲の良い兄弟が互いの顔を見たくないほどの骨肉の争いをするのを見ると、いっそ遺産などなかった方がとか、遺産を残すならせめて遺言も残しておいて欲しかったと思う場合が多々あります。

 折角一生をかけて築いた財産でありますから、その死後の処分も決めておくのは、遺族に対する思いやりであるとともに責任でもあります。遺族に紛争の種を残さぬよう、むしろ元気なうちに遺言を作成しておくことをおすすめします。早すぎることには何の問題もありません(民法は、15才になれば遺言をする能力を認めています)。むしろ遅すぎた場合にだけ問題が発生します。遺言は遺書ではありません。もっと気軽に利用しましょう。

 特に、子供さんのいないご夫婦の場合は、遺言がなければお互いの財産をすべて相続するには、相手方配偶者全員の兄弟の印鑑ももらわなければなりません。しかし、お互いに包括相続の遺言をしておけば、相手方の兄弟の印鑑をもらわなくとも、その遺言だけで相続登記をすることも預金をおろすこともできますので、大変効果があります。相手方配偶者の兄弟姉妹には遺留分減殺請求権がありませんので、一部取り戻される心配も全くありません。

 つい先日も、子供さんのいないご夫婦から相談を受け、次のような公正証書遺言を作成するようなアドバイスをし、私共が立会人となり、公証人役場で同じ日に2つの公正証書遺言を作成しました。


 「遺言者は、遺言者の所有する不動産及び預・預金債権、株式等一切の財産を、
  遺言者の妻(夫)○○○○(昭和 年 月 日生)に相続させる。
  遺言者は、前項の遺言に関し、遺言者の妻(夫)○○○○を遺言執行者に指定する。
  遺言執行者は、預・貯金債権等の解約、払戻および名義書換等を請求する権限を有する。」

 遺言を作成した後のお二人の安心した顔が大変印象的でした。ご夫婦の愛情が更に深まったように感じられ、遺言の効力は、死んだ後ばかりではないことをはじめて知りました。

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