調整・使用結果
実験は晴天の下、JIφRMY局の協力を得て、河川敷にて行な
われました。下図のように地上高3mに設置したヘンテナと受信
側の局の連携体制でデータを計測しました。(残念ながら仰角に
関した測定は技術的アイディアが浮かばず行いませんでした。)
測定機器はすべてK社製で電界強度計はショットキーダイオード
を利用した自作検波器です。
ヘンテナの地上高は直近の金属構造物より1λ以上離れていれば
調整可能と考えます。ただし、1/4λ長以上の金属構造物が電
界に垂直に入ることが影響するため上図のようにFRP製のマス
を足したところにヘンテナを固定するようにしました。
まず、反射器をガムテープなどを使用して輻射器の後方17cm
(経験値)に固定します。反射器の調整部を120mm、輻射器
および、第1〜第3導波器の調整部をすべて設計図の寸法通りの
位置に鰐口クリップなどで固定します。
1Wを負荷したとき、SWRが2.5以上のものは同軸系やバズ
ーカの異常やSWR計の公正ミスを考えて下さい。特にバズーカ
の圧着端子を含む足長が長すぎたりすると覿面にSWRは上昇し
ます。
SWR最低・電界強度最高を目指しますが、その2つはパラレル
に変化しないことが多いです。妥協点を見いだすためには5W程
度の出力を負荷し、パワーメーターの振れが最大になるところも
参考にして下さい。
基本的手順としてまず輻射器の調整部を内寸で1mmずつ側部に
近付けて下さい。必ず両側同時に変化させて下さい。変化させる
都度、計器類を読んでデータをとります。同じ長さにて431.
02、432.02、433.02、437.02の各周波数で
FM送信し、データを取っていくと能率的です。時間と根気があ
るひとは長さの変化を0.5mmにしてもよいでしょう。ヘンテ
ナ全体の造りによっては離すとマッチするタイプ(通称怪しいタ
イプ)もありますので御参考まで。この要領で反射器、第1導波
器、第2導波器、第3導波器の順で長さを決めていきます。全体
が決まったらもう一度調整されても構いませんが、2回目以降も
微妙な変化をしますのではまらぬよう御注意。筆者は試作品1号
器からずっと1回の調整で決めています。試作品1号器をはじめ
て使った日の夜中に長野市から松前郡と5WFMで55/51に
て交信しました。
最後に反射器と輻射器の間隔を15〜23cmの間で5mmずつ
変化させて決定して下さい。調整には河川敷などの広いところを
利用し、送信周波数は必ず空いていることをチェックしてから使
用しましょう。
測定機器が自作などでアナログチックのため、スミスチャート等
は作成していません。ビームパターンは以前のを掲載します。サ
イドの切れやF/Bはかなり良いものとなりました。前回(19
96年・1列2段)の作成と同様にSWRはバンド内でブロード
に低値で、簡易法で予測した利得はシングルでも20dB以上で
した。
調整のとれたヘンテナは約3MHz位の帯域で100W負荷でも
SWRは1.05以下となります。その場合430MHzバンド
内の最大SWR値も1.20以下に収束します。
シングルのビームパターンシェーマ
2列2段に使用したアンテナの最終的調整部位置
上記●は433MHzを中心周波数に設定した15エレヘンテナ
シングル(1996年製作)、○は18エレ八木2列2段のデー
タです。この日に飯山市移動局(直線距離約40km)と59/
59の交信ができ実験は成功裏に終了しました。
以上のデータで、調整部とエレメントを4mmφの鍋ネジで固定
し、反射器をブームに4mmφ40mm長鍋ネジで固定します。
移動用ヘンテナのスタック運用実績について
再現性のあるヘンテナに関しては2分配器・4分配器を使用
してスタック化を図れますが以下にスタック使用時の特徴を
まとめておきます
仕 様
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水平2列
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垂直2段
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2列2段
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4列
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推定利得
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24.5dB
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24.5dB
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27.5dB
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27.5dB
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水平指向性*
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+++
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+
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++
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++++
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垂直指向性*
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+
|
++
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+++
|
+
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山間地運用**
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○
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○○
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○○○
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△
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調節***
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容易
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容易
|
容易
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難
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*: 15エレシングルを+とした場合
**:15エレシングルを○とした場合
***: 15エレシングルを容易とした場合
移動用ヘンテナの設置地上高について
ツインループ系のヘンテナは地表の影響を受けにくく、打上
げ角も高いのですが”セッティング時の地上高はより高いほ
うがよい”ということが比較実験においても証明されました
ので記載しておきます
(運用標高が低くても期待される特性を発揮しますが低い地上高がよいとは限りません)