ストレス解消になる涙と逆効果の涙の違い
ストレス解消できる涙と逆効果になってしまう涙がある。
涙を流せる人と流せない人の違い
涙で気分がよくなる
映画を見る前後に脳の活性度を調べる「POMS心理テスト」も行いました。その結果を見ると、涙を流した人と、泣けなかった人では、とてもはっきりとした違いが表れました。
POMS心理テストとは、気分の状態を「緊張・不安」「抑圧」「怒り」「活力」「疲労」「混乱」という6つの尺度で測る心理テストです。
ちゃんと泣くことができた人は、混乱および緊張・不安の2項目の億が改善したのに対し、泣けなかった人はほとんど改善が見られなかったのです。被験者の実感としても、泣いた人は「スッキリした」と言うのに対し、泣けなかった人はもやもやした思いを残していました。
これは、「泣きそう」になっただけでは、共感脳が充分に興奮しないため交感神経から副交感神経へのスイッチングが起きず、ストレスが解消されないまま終わってしまうことを意味しています。
共感脳の興奮と涙の量の関係を示すデータは他にもあります。それは、泣いたとしても、涙をほんの1粒ぼろっとこぼす程度では、やはり「号泣トリガー期」に見られるような極端な血流の増加は見られないということです。号泣トリガーと命名していることからもわかるように、極端な血流増加が見られたときには、必ずその直後に「号泣」に至ります。
また、同じ情動の涙でも、悔し涙や悲しみの涙といった、自分の感情の高まりのまま流す涙より、感動の涙のように「共感」を必要とする涙の方が共感脳の血流は大きいと考えられます。
さらに興味深いのは、意識的に涙を流す「役者の涙」です。私たち一般人にはなかなかやろうと思ってもできませんが、役者さんは、演技で涙を流すことができます。
調べてみると、「役者の涙」では、それまでの情動の涙とはまったく違うことが脳の中で起きていることがわかったのです。
自然に涙が流れる場合は、一か所だけ飛び抜けて大きな血流が現れる「スパイク型」の増加(=号泣トリガー) が見られますが、意識的に泣いた場合は、小刻みに多くなったり少なくなったりする波形を記録しただけだったのです。
そして、POMS心理テストの結果も、緊張・不安、抑圧、疲労、混乱の4項目が悪化するという、まったく異なる結果が出ました。
つまり、役者の演技による涙は、ストレスを解消するどころか、かえってストレスを増強させてしまうことがわかったのです。