男より女のほうが泣ける理由

涙に男女差はあるのでしょうか?

クールな脳が号泣する直前には、驚くほどの興奮がある

男女のホルモンの働きが影響している

男性より女性の方が涙もろいといわれていますが、もともと持っている「泣く」能力には、男女差はありません。

男女差が生じるのは13歳ぐらいからで、涙の研究で知られるアメリカの生化学者ウィリアム・フレイ博士は、ちょうどその頃から男女でホルモン分泌に違いが生じるのが原因ではないかと考察しています。博士が注目した女性ホルモンは「プロラクチン」という母乳の出を促す脳下垂体ホルモンで、これが泣く頻度に男女差をもたらしているのではないかと述べておられます。

そう考えてみると、確かに子供を出産したばかりの女性はよく泣くという話を聞きます。母乳の出を促すホルモンが、涙の出にも関係しているとすれば、授乳期の女性が涙もろくなることは充分考えられます。

博士が注目したのはプロラクチンでしたが、女性の月経周期と深い関係を持つ「エストロゲン」という女性ホルモンの影響に注目する専門家も存在します。

「女心と秋の空」という言葉があるぐらい、女性の心の状態というのは、男性よりも大きな変化を見せますが、実はこうした心の起伏をつくっているのは、エストロゲンという女性ホルモンなのです。

エストロゲンは「卵胞ホルモン」といわれるもので、男性ホルモンの場合ではそのホルモンの濃度はほぼ二疋していますが、思春期以降の女性では、月経周期に応じてエストロゲンの濃度が大きく変化します。

エストロゲンの濃度は、排卵の前から少しずつ増えていき、排卵のときにマックスとなりその後は減少していきます。そして入れ替わるように今度は、プロゲステロン(黄体ホルモン)が濃度を上げていきます。

この、エストロゲンが減少する排卵から月経までの間、多くの女性がイライラしたり、気持ちが落ち込みやすかったり、泣きたくても泣けないなど、ちょうど「うつ」に近い精神状態になることがあります。これを医学的には、「月経前症候群(PMS」といいます。

PMS月経症候群についてはこちら。

「うつ」といえば、セロトニン神経の機能低下が関係している病気です。そこで、女性の脳内のセロトニン濃度とエストロゲンの濃度の関係を調査しています。

すると、実に興味深いことに、両者の間には、はっきりとした「相関関係」があることがわかりました。

それは、エストロゲン濃度が高いときには、脳内のセロトニン濃度も高く、エストロゲンの濃度が低いときにはセロトニン濃度も低くなっている、というものでした。

つまり、排卵前の女性は、セロトニン濃度が高いので、それだけ共感脳も活性化しているので涙もろくなり、月経前の女性は、セロトニン濃度が低いので、反対に泣きにくい状態にあるということです。

女性にはこうした性周期による「泣きやすい時期」と「泣きにくい時期」があるので、男性よりも感情の起伏が激しく、涙もろいように思われるのだと考えられます。

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