有名アスリートの涙
共感脳が興奮し、号泣トリガーがはっきり現れたほうが、ストレス解消効果が高い
大人になると号泣できる場面は少ない
涙をこぼす機会は減る一方
ストレス解消には、思いっきり「号泣」した方がストレス解消効果はより効果的です。しくしくと静かに泣くより、わんわん声を上げて泣いた方がスッキリするということです。
そしてこのことは、共感脳が興奮し、号泣トリガーが明確に現れたほうが、ストレス解消効果が高いことから、事実であることが証明されました。
でも大人になると、なかなか号泣する機会はありません。号泣どころか、映画を見て涙をこぼすのさえはばかられるというのが現実でしょう。特に男性は「男は簡単に泣くものではない」と言われて育つので、女性よりもさらに泣くことができません。そこで、ストレス解消のためにおすすめしているのが、意識して感動の涙を流すということです。
映画館で泣くのは恥ずかしいという人でも、ひとり自室でビデオを見ながら泣くことならできるはずです。
ずっと泣くのをがまんしてきた人に、ストレス解消になるから泣きなさいと言っても、すぐには難しいかもしれませんが、号泣できればとても大きなストレス解消効果が得られるのですから、ぜひ積極的に号泣にチャレンジしていただきたいと思います。
ストレス解消を目的とした場合、泣き方にはいくつかのコツがあります。まず、時間帯は朝ではなく夜を選ぶこと。
これは、1つには、朝はストレスがそれほど溜まっていないので、泣いても大した効果は得られないという理由があります。そしてもう1つは、感動の涙を流すにはある程度時間が必要だからです。
心身にストレスを感じている日の夜、充分な時間的余裕を持った状態で、泣くのがおすすめです。
私は実験には映画を使いましたが、あなたが泣けるものであれば素材は映画でもドラマでも音楽でも本でも何でもかまいません。内容も感動できるものであれば、恋愛ものでもスポーツものでも何でもいいので、自分の感性に合わせて自由に選んでください。
ただ、ホラーなど恐怖ものだけは避けた方がいいでしょう。昔から恐ろしい体験をすると「血の気が引く」といいますが、恐怖映画を見ている人の脳の血流を調べた結果、実際に前頭前野における血流が減少することが確認されています。
前頭前野から血の気が引いているのですから、恐怖映画を見てもし涙を流したとしても、それは感動の涙ではないので、ストレス解消にはなりません。もう1つ、大切なコツは、泣きたくなったらがまんをしないということです。
映画などを見て、胸にグッと詰まる感じがしたり、目が潤んできたら、がまんをせずに思いっきり涙を流しましょう。
というのも、私の言う「号泣」の定義とは、自分では涙をコントロールできない状態になるということだからです。ごく簡単に言えば、止めようと思っても、泣くという行為を止められなくなってしまう状態です。
たとえば、現役を引退した野球のプロ野球の球団を引退したアスリートのFさんは、その引退会見で、感極まって数粒の涙を見せました。あのとき実際に流れた涙は数粒でしたが、あの涙は、泣くのをがまんして、堪えに堪えたうえで流れた数粒なので、脳の中は号泣状態になっていたといえます。
胸にこみ上げてくるものがあり、言葉がしゃべれなくなる。顔の表情をコントロールできなくなる。がまんしても肩を震わせてしまう。こうした状態になれば、流れた涙の量は少なくても、脳内ではスイッチングが行われています。
ですから、号泣というと、わんわん声を上げて泣くことと思われがちですが、そこまでいかなくても、止めようと思っても止まらない状態になれば、脳内のスイッチングは完了し、充分なストレス解消効果が得られます。
大人になればなるほど泣く機会は減る傾向にありますが、感動の涙に関していえば、いろいろな経験を積んだ大人の方が、いろいろなものに共感できるので、本当は涙を流しやすい脳の状態にあるといえるのです。
感動の涙はまさに大人のための涙です。ぜひ、ストレス解消のために、上手に活用していただきたいと思います。