ストレス解消 涙を流すとスッキリする理由

脳の病気から心臓の病気まで大事な血管について

ストレスは「涙」の力で解消できる!

ストレスがスッキリするのは涙の力

セロトニン神経が鍛えられていれば、その5つの働きによって、朝はスッキリと目覚め、交感神経が適度に緊張しているので元気がみなぎり、身体もスムーズに動きます。同時に、姿勢がよく、目には力がみなぎり、心の面でもわだかまりも不安もない非常に安定した精神状態でいられます。その上、痛みにも強くなるというのですから、セロトニン神経さえ鍛えていれば、ストレス対策は万全のように思えます。

でも、実はlつ、大切な働きがセロトニン神経にはないのです。

それは、「免疫系を強める」という働きです。実は、いくらセロトニン神経を鍛えても、病気に対する抵抗力はまったくつかないのです。

ストレスには2つの経路があります。視床下部から下垂体→副腎皮質,→免疫力低下→身体的病気、という「身体的ストレス経路」と、視床下部から脳幹・縫線核→セロトニン低下→ 精神的病気に至る「精神的ストレス経路(脳ストレス経路)」です。

セロトニン神経を鍛えると、日々ストレスで弱るセロトニン神経の機能を回復させることができるので、精神的ストレス経路の動きを抑制することができます。でも、いくらセロトニン神経を鍛えても、身体的ストレス経路には直接の影響を与えられないのです。

ストレス経路はどちらか1つが動けばもう1つも悪くなる、逆にどちらかがよくなればもう一方もよくなるというものではありません。事実、気力ややる気はまったく失っていないのに、ストレスで胃潰瘍になる人もいれば、反対に、うつ病になったけれど、身体はいたって健康という人もいます。どちらも病気の原因はストレスですが、症状はまったく違います。これは、どちらのストレス経路がより強く反応したかによって、結果が違うものになっているのです。

自分はどちらの経路の影響が出やすいのか、つまり、ストレスが身体に出やすいのか、精神面に出やすいのか、自分のウイークポイントを知っておくことも、ストレスと上手につきあっていくためには大切なことです。

精神的ストレス経路は、セロトニン神経を鍛えることである程度抑えることができることがわかりました。

では、身体的ストレス経路はどうすれば抑えられるのでしょう。ここで思い出していただきたいのが、人間に備わっているもう1つの抗ストレス能力、「涙」の存在です。

実は、この「涙」にこそ、身体的ストレス経路にも対抗しうる力が秘められているのです。私たちは3種類の涙を持っています。

目から流れる涙は3つある

一言でで「涙」と言っても、人間の涙は1つではありません。

1つ目は「基礎分泌の涙」。これは、目を保護するために常に目を潤している涙です。疲れ目や長時間のパソコン仕事、エアコンの普及などが原因で増えている「ドライアイ」は、この基礎分泌の涙が不足してしまう疾患です。

ちなみに現代人の悩みである目の疲れを改善するのにとてもよい物質があります。それがアントシアニンというポリフェノールです。このアントシアニンがたっぷる含まれるのがアサイーベリーです。白内障や緑内障のような目の病気まで改善している体験談などが紹介されています。

2つ目は、目にゴミなどが入ったときや、タマネギを切ったときに流れる「反射の涙」です。これは、目に入った異物を洗い流すための涙です。

そして3つ目が、悲しいときや感動したときに流す「情動の涙」です。これは人間にしか流せない涙であり、抗ストレス能力を持っているのもこの涙です。

子供が転んだとき流す涙は、痛みに対する反応なので、反射の涙だと思っている人も多いのですが、実は遠います。これも「情動の涙」です。

このことを説明するためにも、私たち人間が成長の過程でどのように涙を流してきたかを見ておきましょう。

人間は「産声」と呼ばれる泣き声を上げながら生まれてきます。でも「泣き声」といっても実際には、新生児は涙を流してはいないのだそうです。

私たちが「涙」を流すようになるのは、1歳ぐらいになってからです。人が最初に涙を流す原因は、身体的ストレスです。お腹が空いたり、のどが渇いたぬり、おむつが濡れたり、痛みを感じたりと、何らかの「不快=ストレス」を感じることによって泣くのです。

赤ちゃんのうちは、単純に泣くことでストレスを解消します。しかし、成長していくに従い、この涙にもう1つ別の目的が加わっていきます。それは、涙を流すことによって、親や周囲の人に、自分がストレスを感じていることを理解してもらい、そのストレスを受け取って処理してもらうという目的です。

赤ちゃんのうちは、単にストレスに対する反応として泣くのですが、泣けばミルクをもらえる、泣けばおしめを替えてもらえるということを繰り返していくうちに、泣けば不快を取り除いてもらえることを、経験を通して学びます。こうして、幼い子供はストレスを親に解消してもらうために、泣くようになっていきます。

たとえば、子供は誰もいないところでは転んでもすぐには泣きません。そして、親など自分のストレスを理解してくれそうな人の姿を見つけた途端に泣き出します。

これは「涙」が単に痛みの緩和のために流されているのではなく、「ママ、僕の痛みをとって! 」と訴えるために使われていることを意味しています。

つまり、言葉をうまく使えない幼い子供は「ストレス泣き」を、親子間の「非言語によるコミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)」のツールとして使っているのです。

そうした幼い子供のストレス泣きも、成長していくと抑えられていきます。「そんなことぐらいで泣かないの」「男の子が泣いていたらおかしいわよ」「もうお姉ちゃんなんだからがまんしようね」などと親や周りの大人たちから言われることによって、泣くというコミュニケーションにはもう応じてもらえないことを知るからです。

そして、ノンバーバルコミュニケーションではなく、言葉で自分の気持ちや状態を周囲の人々に伝えることを学習していくのです。

ちなみにこのとき涙を抑えることができるようになるのは、脳科学的にみると、「小脳」の発達によるものです。小脳のというのは、「運動」に関する脳です。つまり、「泣く」という運動を小脳が抑制することで涙を止めているのです。

ストレス泣きを卒業した子供は、その後、青年期にかけて新たな涙を流すようになります。

その1つは、自尊心が傷つけられたり、勝負に負けたことによる「悔しさ」に耐えられなかったときに流す「悔し涙」です。そしてもう1つ、好きな人との別れなど「悲しみ」に耐えかねたときに流す「悲しみの涙」です。

幼い子供の涙が「ストレスをわかってもらう」ためのものだとすると、これは、「自分の抑えきれない感情の発露」だといえます。悔しい、悲しい、寂しい、つらいといった自分の感情を自分で処理するために涙を流しているのです。

ところが、こうした「悔し涙」や「悲しみの涙」も、大人になると人前で流すことは許されなくなります。

そして、大人になって流すようになるのが「感動の涙」です。感動の涙は、幼い子僕は流しません。これは人間固有の涙であるとともに「大人の涙」でもあるのです。

なぜ、幼い子供は感動の涙を流せないのかというと、この涙のベースにあるのが「他者に対する共感」だからです。

映画やドラマを見て感動して流す涙、オリンピックで活躍した選手の流す涙に誘われて一緒に流す涙、それが感動の涙です。これらはどちらも相手の喜びや悲しみを自も叫緒に感じることによって生じる涙です。幼い子供がこの涙を流せないのは、まだ経験が少なく「共感」そのものがきちんとできないためです。

脳で「共感」に関するのは、共感脳と呼ばれる「内側前頭前野」ですが、実際、感動の涙を流している人の脳の血流量を測定すると、内側前頭前野の血流が増加することがわかっています。

子供は、さまざまな涙を経験することで、前頭前野を鍛え、共感の涙を流せる大人の脳へと成長していくのです。

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