号泣による相乗効果
ひっそりひとりで泣くばかりではない
同じ苦しみを持つ人同士が、一緒に涙を流す
を流し、互いの苦しみや悲しみを分かち合う
大人の涙は、ひとりのときに流すのが基本ですが、ときには、人と涙を分かち合った方がよりストレスが解消される場合もあります。
それは、同じ苦しみを持つ人同士が、一緒に涙を流す場合です。たとえば、事故などで大勢の犠牲者が出たようなケースでは、遺族の会が設けられ、互いに自分たちの思い出や経験を話し合い、涙を流し、互いの苦しみや悲しみを分かち合うということが行われます。
なぜ、同じ苦しみを持った人同士でこうしたことが行われるのかというと、そうした人同士の方が、より大きな「共感」を得ることができるからです。
共感の力はとても大きなものです。何しろ、映画やドラマを見て、こちらが一方的に相手に共感しただけでも涙が流れるほどなのです。同じ苦しみを持つ者同士が、互いに共感し合ったら、どれほど激しく共感脳が興奮することか、おそらく想像以上のものがあると思います。
愛する人を失った苦しみ、悲しみは、耐え難いほどに大きなストレスです。人はつらいときに、自分の苦しみを他人に共有してもらえると、気持ちが楽になりますが、その一方で、相手の共感の度合いが低いと、それを感じ取って「私の本当の苦しみはわかってもらえない」という失望感が生じてしまいます。
でも、同じ経験を共有した者同士であれば、たとえ相手が涙を流さなくても、この人たちは自分の気持ちをわかってくれているという安心感があるので失望する心配がいりません。ましてや、自分の体験を聞いた相手が、共感して涙を流してくれたら、どれほど大きな実感が得られることでしょう。
おそらく、まるで音叉が共鳴し合うように、互いの共感脳が共鳴し、激しく興奮すると思われます。互いに共感脳を激しく興奮させながら泣くことができれば、ひとりいやで号泣する以上の癒しの効果が得られると考えられます。
脳を発達させた人間だけが行える、「言葉を使ったグルーミング」だととらえています。
軽いものでは、サラリーマンがお酒を飲んで互いにグチを言い合うのも、言葉によるグルーミングの1つですし、失恋した友人の話を聞き、一緒に悲しんだり慰めてあげるのも、やはりこうした行為の一つだと考えられます。
そうしたさまざまな言葉を使ったグルーミングの中でも、最も効果が大きいものが、この「同じ苦しみを共有する者同士が語り合い、一緒に涙を流す」ということなのだと思います。
互いに共感し合うというのは、とても大きな喜びをもたらします。恋人同士がデートを重ねるのも、ある意味、同じことを二人ですることによって「共感」を積み重ねているのだともいえます。
ですから、恋人同士やご夫婦などカップルで、一緒に感動する映画を見て、涙を流すというのは、とても大きなストレス解消法なのです。パートナーのいる人は、ぜひ試してみてください。