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ビタミンは個人がライフスタイルに合わせた摂取方法がベスト。ビタミンの基礎知識に加えてどんなビタミンを消耗しやすいかを突き止めて効率よくビタミンを摂取する。日常的にスポーツで体を動かす人のためのビタミン摂取法です。スポーツなどで体を動かす人はどのようなビタミンをしっかり摂ればいいのでしょうか?
スポーツや運動をする人のビタミン摂取方法
体を動かす人が不足しやすいビタミン
マラソン選手はB1を所要量の10倍とっても足りない
さまざまな生活習慣病の予防に、運動がすすめられています。現代人の多くが日ごろの運動不足を気にかけているかたは少なくないでしょう。血圧や血糖値のコントロールに、また肥満の解消に、運動は確かに有効ですが、体の活動量が高まれば、ビタミンの需要も高まることを忘れてはなりません。
運動によってエネルギーが余計に消費されれば、糖代謝に働くビタミンB1、脂質代謝に働くビタミンB2がそれだけ多く消費されることは容易に想像できます。
極端なケースとしてマラソン選手を例にとれば、B1の1日所要量の10倍にあたる10mgを摂取してもまだ血中B1濃度が正常域に入ってきません。毎日まめにジョギングをつづける人なども、そのためにBlなどの潜在性欠乏症を強めるおそれがありますので、ビタミンの摂取にもまめになることが必要です。
運動時は活性酸素の体内発生が10~20倍に急増
呼吸によってとり込んだ酸素の1~2%は活性酸素に化け、細胞の内外に漏れ出しますが、運動時には、全身の酸素消費量が安静時の10〜20倍に上昇します。このことは、運動に伴って、ふだんの10〜20倍量の活性酸素が体内に発生することを意味しています。
運動時にはまた、血液が筋肉に供給されるため、腸管や肝臓、腎臓などの臓器では血流が低下します。運動後はこれらの臓器に血流がどっと流れ込みますが、この虚血-再灌流の際にも、活性酸素が洪水のように組織をおおうのです。
軽い運動では、これに対抗して活性酸素の消去能力が高まり、体にとっていいのですが、過剰な運動は逆に、活性酸素の体内発生量をふやしますので、運動によって若さを保つつもりが、かえって体の老化を促進してしまう危険があります。
活性酸素の体内発生量を低く抑えるライフスタイルという意味では、スポーツで汗など流さずに、家でゴロゴロ昼寝でもしていたほうがいいわけです。
しかし他方、運動の効用があることも確かですので、適度の運動をし、なおかつ運動によって発生した活性酸素を速やかに消去できるだけの抗酸化ビタミンを体に蓄えておくことがすすめられるのです。
運動後の血中過酸化脂質の増加をビタミンEが抑制する
ネズミに運動負荷を与えて血中過酸化脂質の変化を調べる実験を行いました。
普通のエサで飼育したネズミは、運動直後の血中過酸化脂質が20%増加していました。血中過酸化脂質は、フリーラジカルなどによる脂質過酸化の結果生じるもので、動脈硬化の指標として人間ドックの検査項目などにとり入れられているのをご存じのかたもあるでしょうが、運動が確かに体に悪いことがこの実験で示されました。
ところが、ネズミをビタミンEを含むエサで4週間飼育したのち、同じ運動負荷を与えると、運動後の血中過酸化脂質の増加は著明に抑制されたのです。
同時に測定した血中ビタミンE濃度を運動の前後で比較すると、普通のエサで飼ったネズミは血中E濃度に変化がありませんでした。これに対してビタミンEを含むエサで飼ったネズミは、運動後、血中E濃度が著しく低減しました。
これは運動に伴って発生した活性酸素の消去にビタミンEが働き、血中過酸化脂質の増加を防ぐのに使われた証拠です。
運動後は血中βカロチンやビタミンC濃度も低下する
ヒトにおいても、運動によって体内の抗酸化ビタミンがはげしく消費される様子がトライアスロンなどの例で調べられています。
トライアスロン選手は、全身持久力と関係の深い最大酸素摂取量が普通の人にくらべ、著しく高まっています。その最大酸素摂取量の85%のランニングを30分つづけてもらう実験を行ったところ、トライアスロン選手はふだん、普通の人の2倍のビタミンCを摂取していたにもかかわらず、運動後の血中Cの濃度は逆に普通の人の半分にまで低下していました。
このように血液中のビタミンCも運動に伴って発生する活性酸素の消去に働きますが、ビタミンC自体の抗酸化作用よりも、おそらく活性酸素の消去に働いたビタミンEを再生する作用が重要と思われます。
また、トライアスロン選手の血中βカロチン濃度を調べた研究では、競技直後は血中β カロチン濃度が低下し、翌日はさらに下がって競技前にくらべると21%も低くなることが明らかにされています。これははげしい運動に伴う活性酸素の消去にβカロチンも働く証拠と見ることができます。